従業員から給料の前借り依頼があった場合

ベトナム人従業員から給料の前借り依頼があったんですが、どう対応するべきでしょうか?

基本的には会社の判断に委ねられますが、ベトナム社会における給料の前借り事情について知っておいたほうがいいかと思います。

従業員から突然給料を前借りさせてくれと言われたら驚くかもしれません。こういったケースに出くわす日本人はそれほど多くないと思いますが、ベトナム人一般が考える給料の前借りとはどのようなものでしょうか?今回はベトナム社会における給料の前借り事情について解説します。

ベトナムではそれほど珍しい話ではない

給料の前借りを依頼されると驚くかもしれませんが、ベトナムではそれほど珍しい話ではありません。私たちの場合は外国人(外資系)ですので、そこで働くベトナム人従業員から依頼されることは少ないかと思いますが、ローカル企業、特に小規模な会社などでは時折聞く話です。また警察や役所といった公務員でもそういった給料の前借り依頼はあるようです。

前借りをする理由ですが、多くは冠婚葬祭や身内の病気関連といったところになります。急にまとまったお金が必要になったということで自身の蓄えでは捻出できないときにそういった依頼、相談があるわけですがやはり全体的には所得の低い層からの依頼が多くなります。

因みに娯楽のために給料の前借りを依頼するということはなく、さすがにそれについてはベトナム人同士でも非常識な人という扱いになります。間違っても「I-Phoneを買うから給料を前借りさせてくれ」というような従業員は認められませんし、社会的にも受け入れられないと言えます。

前借りではなく借入れを依頼するケース

給料の前借りは元々その従業員に支払われるべきお金を時期を早めて払うことですので、実質会社から出ていくお金の額は変わりません。一方給料の前借りではなく、金銭の借入れを相談されるケースがあります。先ほど冠婚葬祭を理由として前借りの相談があると書きましたが、こちらはそれよりももっと多額の金銭が必要になるケースです。例えば家族が大病を患い多額の手術費用がかかる、あるいは不動産や車の購入なども事例として聞きます。

しかしこういった場合、普通の従業員と社長という関係では貸付けの依頼があることは稀でしょう。大体は会社を越えた枠での付き合いがある関係で、プライベートも何でも話せるような関係であることが普通です。依頼する人が会社のお金から借りようとしているのか、社長のポケットマネーから借りようとしているのかはそれぞれですが、信頼関係がなければこのような話がでることはまずありません。

借入れを依頼する側はいくつかの伝手を当たり、会社も選択の一つと捉えているわけですが、一般的にベトナム人がお金を借りる場合の手段と感覚について以下に列挙します。

・身内:一番安全且つ多い。「貸付」と「援助」の境界が曖昧になりやすい。

・銀行:審査に通るかの問題がある。金利の高さや担保などを理由に避けることも。

・友人:少額(10万円程度)であればよくあるが、多額の場合はかなり限られた人でないと難しい。

・サラ金:娯楽理由では圧倒的に多いが、生活そのものが破綻する可能性がはらんでいる。

こういった中から会社を頼れそうであれば選択肢の一つに入ってきます。

前借りや貸付けを依頼されたらどうすべきか

さて、冒頭の質問に対する回答ですが、前提として会社(または個人)に委ねられるとして以下に私見を述べます。

前借りについては一応支払い予定のお金ということで事情によっては柔軟に対応することも一考です。特にやむを得ない事情などがあり、当事者との信頼関係に自信がもてるのであれば、多少の温情を見せることも悪いことではないかと思います。ただし簡単に前借り請求を受けるのも困りますので、その場合はどのようなケースで認めるかの規定を作成しておいたほうが無難です。因みに労働法第101条でも賃金の前払いに関する定めがあり、双方の合意がある場合は認められています。

一方貸付けについてはお勧めしません。日本の従業員貸付制度のようなものを実施している企業であれば別ですが、ベトナムでは聞きませんし、そういった制度を確立するのは今のところ難しいと感じます。というのも、

①一度事例を作ってしまうと各方面から高い頻度で依頼があるかもしれない

➁借入の返済計画の見通しが日本人のそれよりも甘い傾向がある

➂そもそも完済するまでその会社に所属しているかの問題がある

④音信不通になった場合に行方を追って然るべき措置を取るのは難しい

といった懸念があるからです。会社に依頼する時点で困っているのは十分理解できますが、そこは然るべき理由をつけて断ったほうがいいでしょう。困っていたときに金銭的に助けたという事実は生涯にわたって恩義を感じられるかもしれませんが、会社を通じて貸すリスクを考えますと踏み込むべきではない領域だと考えます。