短期離職者へ賠償金の請求:労働者はどう応じるべき?

事情があって数カ月で自主退職することになりましたが、労働契約書に「1年以内に自主退職した場合は採用に要した費用を賠償として請求する」という記載がありました。あまりよく考えずにそのときはサインしてしまったんですが、払わなければならないんでしょうか。

応じる必要はありません。労働法で規定された内容を逸脱する契約はその部分につき無効になるとされてます。

日本人を採用するためにそれなりの費用をかけて採用する企業も少なくありません。そういった人材に対してはできるだけ長期的に働いてほしいと思うものですが、残念ながら短期で退職するというケースもあります。今回は短期離職者に対する賠償といった観点から、労働法上における労働契約、賠償請求に関する内容を解説します。

労働者に賠償を請求できるケース

ベトナムの労働法第129条1項では使用者が従業員に対して求めることができる「損害賠償」について規定されています。

Điều 129. Bồi thường thiệt hại

1. Người lao động làm hư hỏng dụng cụ, thiết bị hoặc có hành vi khác gây thiệt hại tài sản của người sử dụng lao động thì phải bồi thường theo quy định của pháp luật hoặc nội quy lao động của người sử dụng lao động.
Trường hợp người lao động gây thiệt hại không nghiêm trọng do sơ suất với giá trị không quá 10 tháng lương tối thiểu vùng do Chính phủ công bố được áp dụng tại nơi người lao động làm việc thì người lao động phải bồi thường nhiều nhất là 03 tháng tiền lương và bị khấu trừ hằng tháng vào lương theo quy định tại khoản 3 Điều 102 của Bộ luật này.

第129 条 損害賠償

1.使用者の用具,設備を破壊した,又は財産に損害を惹起するその他の行為をした労働者は,法令の規定又は使用者の就業規則の規定に従った賠償をしなければならない。労働者が不注意により、労働者が働くその地域で政府が公表した10 か月分の最低賃金の価値を超えない重大でない損害を惹起した場合、労働者は最大で3 か月の賃金分を賠償しなければならず、労働法第102 条3 項の規定に従って賃金から毎月天引きされる。

労働者に対して金銭的な賠償を求めることができるのは上記の「物的責任」に限られており、その他のことに対する金銭的な賠償を求めることは認められていません。

労働者を不当に拘束する労働契約は無効

では入社時に短期離職の賠償に応じることに合意して労働契約を締結していた場合はどのように解釈されるのでしょうか。労働法第17条では「労働契約締結時に使用者が求めることができない行為」について以下の規定があります。

1. Giữ bản chính giấy tờ tùy thân, văn bằng, chứng chỉ của người lao động.

2. Yêu cầu người lao động phải thực hiện biện pháp bảo đảm bằng tiền hoặc tài sản khác cho việc thực hiện hợp đồng lao động.

3. Buộc người lao động thực hiện hợp đồng lao động để trả nợ cho người sử dụng lao động.

1.労働者が携帯している書類、文書、証明書の原本を保持する。
2.金銭又はその他の財産で労働契約履行の担保をしなければならないと労働者に要求する。
3.使用者に対する債務返済のために労働者に労働契約の履行を強制する。

具体例を出すと、

1は「パスポートやビザなどを使用者が預かるなどの行為」

2は「契約締結時に保証金などを預かる行為」

3は「使用者に対して借金があり、その返済を労働で返すことを強要する」

などが挙げられます。

今回のケースでは2に近いと考えますと、法令に反している労働契約はその部分につき無効とされています(労働法第49条)ので、冒頭のようにたとえ労働契約締結時に同意のサインをしていたとしても今回請求されている賠償に応じる必要はないと解釈できます。また採用に要した費用は使用者都合のものであり、該当者の採用を決定したのも当然使用者側であるので、このような賠償を退職者に求めること自体が不合理であると言えます。

ここからは私見となりますが、今回のような賠償内容を労働契約に盛り込んでいるのは、あくまで労働者を短期で退職させない牽制のためであり、実際に支払いをしつこく強要することまではしないと思われます。仮にしつこく迫って裁判などという話になると企業側が不利な立場になるのは目に見えているからです。

現地採用者が異国で訴えを起こすというのは現実的にハードルが高いものではありますが、明らかに不当な扱いを受けていると感じた場合は毅然とした対応で臨んでください。