経歴詐称が発覚した従業員は解雇できるのか?

従業員が提出していた履歴書の一部に偽りがあることが判明しました。この場合は会社側から一方的に辞めさせることができるのでしょうか?

入社後の段階に応じてアプローチが変わってきますが、特に本採用後の場合は注意が必要です。

従業員の経歴や資格の詐称が発覚した場合、その従業員に辞めてもらうこともあるかもしれません。しかし経歴詐称と言っても一方的に解雇してしまうと思わぬトラブルに発展する可能性もあります。今回は退職を前提としたアプローチの仕方について解説します。

どこからを経歴詐称と定義するか

職務経歴などで実際に経験している以上のことを多少盛るのはよくあることで、その程度で詐称といって辞めさせるのは現実的ではないでしょう。明らかな学歴詐称(高卒なのに大卒と偽る)や資格免許の詐称など、その経歴や資格があるかどうかで達成できる業務が大きく変わる、あるいは実際に適応される賃金体系に大きな違いが出るといった場合などを一つの目安として考えてください。

実際に辞めてもらう場合のアプローチは?

ベトナムの法律に従うと会社側から一方的に解雇を通告するのは容易なことではありません。本件のケースでは労働法上の「使用者から労働契約を解消できる権利」を行使することが有効になります。

入社前(内定を出してから入社まで)

この場合は内定の取り消しということになりますが、まず前提としてベトナムでは日本のような内定という観念が強くなく、使用者と労働者の契約関係は通常入社日から始まります。多くの日系企業は内定の意味合いで候補者にオファーレターを出していると思いますが、ベトナムにおいてこのオファーレターに法的な拘束力はありません。また取り消したとしても、その理由が「経歴詐称」であればそれを不当な取り消しとして騒がれる可能性もかなり低いでしょう。念を入れる場合は定型のオファーレターに以下のような文言を盛り込んでおいたほうがより確実なものとなります。

例:「提出した書類の内容に偽りなどが発覚した場合、当採用通知を取り消しできるものとする。」など

試用期間中

試用期間中は使用者側にも事前の通告なく契約を解消する権利(労働法27条)があり、解消の理由についても経歴詐称(使用者が要求する水準に達していない)といった明確なものがありますので、特にこれといった事前準備を行わずに実行できます。

本採用後

本採用後の場合も試用期間中と似たような形になりますが、懲戒解雇ではなく「使用者の労働契約の解消の権利」を適応させるので、事前予告が必要となる部分に注意してください。労働法36条1-gでは使用者が労働契約の解消をできる場合について以下のように定義されています。

g) Người lao động cung cấp không trung thực thông tin theo quy định tại khoản 2 Điều 16 của Bộ luật này khi giao kết hợp đồng lao động làm ảnh hưởng đến việc tuyển dụng người lao động.

(労働者が労働法16条2項の規定に従った誠実な情報を提供せず、労働者の採用に影響を与える場合)

労働法36条-g

上に書かれている「労働法16条2項の規定」とは

2. Người lao động phải cung cấp thông tin trung thực cho người sử dụng lao động về họ tên, ngày tháng năm sinh, giới tính, nơi cư trú, trình độ học vấn, trình độ kỹ năng nghề, xác nhận tình trạng sức khỏe và vấn đề khác liên quan trực tiếp đến việc giao kết hợp đồng lao động mà người sử dụng lao động yêu cầu.2.

(労働者は,氏名,生年月日,性別,居住地,学問水準,職業能力水準,健康状態の確認及び使用者が要求する労働契約締結に直接関連するその他の問題に関する情報を使用者に対して誠実に提供しなければならない。)

労働法16条2項

としています。つまり経歴詐称は上記の「学問水準」「職業能力水準」に関する情報を使用者に対して誠実に提供していないと解釈できることから、使用者は労働契約の解消の権利を行使できることになります。

この権利を行使する場合、使用者は労働者が無期雇用契約の場合は少なくとも45日前に、12~36か月の有期雇用の場合は30日前に告知しなければならないとしています。(労働法36条2-b)

また経歴詐称によって会社に対して著しく損害を与えたなどであれば、就業規則に懲戒解雇の項目が明記されている場合において懲戒解雇が適応される可能性もあります。(労働法125条-2)

上記は当事者が退職に合意しない場合の法的な対処となりますので、合意した場合は自己都合による退職という処理にできます。実際の事例を見てもそのパターンのほうが多いと思われますので、まずは自己退職を促す方向から進めることをお勧めします。